投手の目指すべき姿がこの2人にある。山本と則本昂が久々に本当の投手戦を見せてくれた。貧打によるロースコアではない。打たれる気配がなかった。

共通するのは、内角を155キロ前後の抜群の球威と正確な制球力で突けること。序盤で言えば山本は浅村、ディクソンに初球から内角をきっちり攻め、その後の配球をバッテリー主導で展開できた。則本昂も最初の打者一巡でインハイで3人を仕留めた。この試合で唯一、甘かった球種がスライダーで、狙うなら一択。だが頓宮に2、3打席目と甘いスライダーを投じたが、1打席目のインハイが効いていて仕留めさせなかった。

基本は直球の速さを武器とするが、体の開きが早く、球の出どころが見えやすければ球速ほど速くは感じない。逆に言えば腕をしっかり振ってバランスの取れたフォームなら145キロでも速く感じる。2人はそれができている上に150キロ超で変化球も腕の振りが変わらない。体は大きくないが、捕手からすれば投げた瞬間にミットに入るような迫力を感じていると思う。

則本昂は近年は右肘の手術もあり、セットポジションで7、8割ぐらいの力感で投げているように見えたが、今季からワインドアップに戻し、本来のスタイルに帰った。3回2死、安達にカウント2-1で首を振り、投じた154キロ直球は、相手が狙っていても力でねじ伏せられると自信を抱いているような力の入った1球だった。試合を通じ、復活したと言っていい投球内容だった。

山本は近年では史上最高の楽天田中将が残した11年の防御率1・27、さらには戦前の記録が大半の防御率0点台を目指して欲しい。大げさではなく、それぐらいの領域にある。(日刊スポーツ評論家)

オリックス対楽天 楽天先発の則本昂(撮影・前岡正明)
オリックス対楽天 楽天先発の則本昂(撮影・前岡正明)